卒業生インタビュー
卒業生が語る!地域で働く魅力とCATの学び

芸術文化観光専門職大学(CAT)の第一期生として2025年春に卒業し、大学のある豊岡で一般企業に就職した卒業生3名は、豊岡演劇祭2025において演劇公演も成功させました。その3名に、地域で働くことへの想いや、豊岡演劇祭成功の秘話、大学での実践的な学びが仕事にどう活きているのかを伺いました。
【対談参加者】
加藤 さん
(但馬信用金庫/在学時:芸術文化専攻)
稲子 さん
(但馬信用金庫/在学時:観光専攻)
永井 さん
(城崎温泉 旅館「小宿縁」/在学時:芸術文化専攻)
I(インタビュアー)
1. 地域で働くことを決めた理由
I: 卒業後、地域金融機関(但馬信用金庫)と城崎温泉旅館(小宿縁)という、地域産業の現場を選ばれました。それぞれの進路を選んだ理由と、大学での学びがどう影響したかを教えていただけますか?
加藤: 3人とも共通しているのは、大学の実習がきっかけだったことです。実習を通して、地域の人柄や、この豊岡で働く楽しさを知って就職を決めました。
稲子: 私もそうですね。私は観光専攻でしたが、街づくり的なところに興味があって、但馬信用金庫の実習で、事業支援という分野から地域をどう盛り上げていくのかを具体的に示してもらいました。また、大学の授業で地域に赴き知識を深めていたので、就職後、それが「点と点が線で結ばれる」ように、実際のプロジェクトで役立っています。4年間但馬で過ごした学びを活かし、自分が進みたい方向に進めるのはここだ、と感じたんです。
加藤: 私の場合、但馬信用金庫の実習で地元企業の支援をされている部署にお世話になり、いろんな事業者さんのお話を聞く中で、「大人ってかっこいいな」って本気で思って。それが就職の大きな決め手になりました。
永井: 私は宿泊業実習で今の会社にお世話になりました。それまでの実習のようにプランを考えたりして会議室で行うものと違って、100%現場で働かせていただけたのがとても貴重な経験で。実習=働く、という経験がそのまま就職につながりました。大学で培ったコミュニケーション能力が、今、接客にすごく活きています。実は、会社の方から、「専門職大学から来る学生は、他の大学の学生に比べて圧倒的に堂々とお客様とコミュニケーションが取れている」と評価していただきました。
I: 実習が地域への就職に直結したのですね。大学での学びで他に活きていることはありますか?
稲子: 今、加藤と私は総合企画部にいますが、大学の座学で学んだことが、就職してから実際のプロジェクトに色付いて、分かりやすく見えるようになったのが良かったですね。あと、大学時代に地域で作った人のつながりが、今になって効果を発揮しています。
永井: 旅館で働いていても同じです。レストランに大学の先生や、地域でお世話になった方が来てくださって、お話しする機会がたくさんあるんです。地域密着の大学だからこその強みだと思います。
2. たんしん演劇部結成の秘話
I: 異なる職場で働く皆さんが、なぜ、またどのように集まり、今回の「但馬信用金庫の営業店での演劇」という、異例の企画が生まれたのでしょうか?
加藤: きっかけは、但馬信用金庫の小山次長でした。もともと演劇をされている方で、実は私自身が「演劇をしたくて但馬に残った」という経緯があり、入庫後すぐに小山さんにその話をしたんです。それで「じゃあ作ろうよ!」と誘ってくださり、私と稲子で演劇部を結成しました。演劇祭への応募期間が迫っていて、急ピッチで準備が始まったんです。
稲子: 私も演劇部ができるなんて思っていなかったので、びっくりしました(笑)。
I: 永井さんは、旅館で働きながらどういう経緯で参加されたんですか?
加藤: 脚本を書く人が必要になったとき、私が「永井さんというやべー奴がいるんです!」と推薦しました(笑)。大学の実習で脚本を書いていた実績があったので。
永井: 加藤から声をかけてもらって、そこから参加が決まりました。職場である旅館の社長も、城崎温泉にヒーローショーなどで地域を盛り上げる土壌があったこともあり、「いいじゃん!」と快く送り出してくれたんです。
稲子: 職場の応援も心強かったです。専務をはじめ、上司の方々が「やるならクオリティ高く」と全面的に応援してくださいました。これまでは演劇に触れてこなかった上司が、この企画で初めて舞台監督や音響をやってくださって。「楽しかった」「これからも関わりたい」と言ってくれたんです。大学時代に自由に演劇作品を作っていた頃とは違い、組織の一員として作る演劇は新鮮でしたが、組織内で温度差を生まないように気を配りながら進めた結果、最終的には多くの職員の方に協力してもらえました。
加藤: 地域からも反響が大きくて、普段演劇を見ない信金の利用者さんたちがたくさん来てくれました。
I: 職場や地域全体を巻き込み、演劇が新たなコミュニケーションの場になったんですね。
稲子: はい。上演当日にいらっしゃったお客様の顔や反応を見て、これが芸術文化による地域振興なのかと再認識しました。私自身、但馬信用金庫が掲げている「地域のコミュニティバンク」となることがどういうことなのかを実感できた、貴重な経験でした。
3. 大学での実践的な学びと想像力(エンパシー)、寮生活
I: 信用金庫の業務、旅館の接客、そして演劇活動。お客様や地域住民、観客と向き合う仕事と活動に、共通する視点はありますか?
永井: 私は、旅館の仕事でも演劇でも想像力(エンパシー)が大切だと感じています。エンパシーをもつと、考える軸の数が増えるんです。相手がどこから来られ、何を求めているのかを想像する。この考え方は、演劇の授業で学んだ「相手の考えを理解するエンパシー」を通して培われました。例えば以前、旅館にスペイン人の方が宿泊された際、英語が通じなかったことから、以前の私なら心折れていたかもしれませんが、「まず話を聞こう」と翻訳アプリを使いながらスペイン語で丁寧に対話をしたんです。その方は裸足で登山をするほど自然のエネルギーを信じている方だとわかり、「地面から湧き出る温泉は自然の力を信じる方におすすめですよ」と外湯めぐりを提案すると、とても喜んでいただけたんです。
加藤: 私も「まず人を理解しよう」という意識が身についていると思います。演劇ワークショップやグループワークを通して、しっかりとしたコミュニケーションを形成する機会が多く、企画提案などでとても活きています。また、実習で外部の方との関わりが多かったので、今の広報の仕事では、メールの書き方や音声・映像ファイルの適切な形式の違いもわかっているので、相手にとって的確な形式で送るなど、実務的な知識が役に立っています。
稲子: エンパシーを持っていると、視野が広がるんです。共感はできないとしても「理解はできる」。自分と違う意見を持つ人に対しても「面白いな」とワクワクしながら接せられるようになりました。大学で企画書や予算書をたくさん書いた経験が、今の仕事に直結しています。自分で考えてプロジェクトを組み、実行するまでの経験ができたので、社会に出てもギャップが少なかったです。
I: そのエンパシーの意識は、特にどのような環境で培われたのでしょうか?
加藤: 私は寮生活がとても大きかったですね。実家での常識と違う生活をする中で、「自分の中の常識を取っ払わないといけない」と気づきました。生活様式の違いに勝手にイライラしていたのは、異なる常識で育った人を理解しようとしなかった自分にあると気づいたんです。
永井: 寮があったからこそ、仲間との絆が深まり、授業でのコミュニケーションもスムーズでした。みんなで課題に取り組んだり、助け合ったりする生活が、そういった多様性を理解する力を育んでくれたと思います。特に、わたしは家のことを何も知らずに来たので、カレーの作り方も分からなくて!いちから教えてもらいながらみんなで食事の準備をしたり、映画や宝塚のDVD鑑賞会をしたりと、共同生活の中で協調性が磨かれました。
稲子: 学年の共有カレンダーがあって予定を自由に誰でも入れることができたので、今日は交流室のプロジェクターでこの映画をやりますっていう予定を入れて集まったり、寮の共有スペースで、一緒にミーティングをしたり、テレビで放送される映画を見たり、一緒に課題をしたり。部屋の別の子とか、そこであつまったりとか。すごいいい空間でしたね。共同生活の中で協調性が磨かれたと思います。
4. 受験生へ、迷いを深め可能性を広げる
I: 最後に、本学を目指している受験生へ、今回の経験を踏まえた、力強いメッセージをお願いします。
永井: 私は当時、進路に迷っている子代表として入学しました。でも、演劇の全セクションや観光など、幅広い分野を実践を通して経験した上で悩めるのが、この大学の強みです。やったことがないから憧れだけで選択するのではなく、適性を知って選択できます。働きながら演劇ができるなんて思っていませんでしたが、それが実現できたのは、この大学がくれた縁のおかげです。
加藤: 役者志望で入学しましたが、様々なことを学べたことで、視野が広がりました。「志半ばで折れたとしても、就職が難しくない環境」が大きかったです。今は、働きながらやりたいこと(演劇)を続けられています。自分の意志を持って何かをするということが当たり前の環境なので、自分のやりたいことを持ったまま社会人になれるんです。
稲子: 都会の大学の方がチャンスがあると思うかもしれませんが、ここだからこそ生まれるチャンスや、「ないなら自分で作ればいい」という気持ちを育ててくれました。芸術をすぐに仕事にしなくても、夢を持ったまま別の道に進める。ここは可能性を潰さない大学です。夢を追うことと地元に根ざすことは、決して相反するものではありません。地方にいることは「選ばなかった結果」ではなく、「ここから何かを生み出すという選択」でもあると思うのです。
永井: 少人数制で教員や職員さんとの距離が近く、すぐに相談できる環境も魅力です。また、地域の方々が、学生が新しいことをやることに協力的で、応援してくださる。ぜひ、迷いを深めに来てほしいですね。
I: 皆さんの活躍は、受験生にとっても、地域にとっても大きな希望です。本日はありがとうございました!
(記事公開日:2026/1/28)




